生まれた時から一緒だった。
いや、それより前に出会っていた。
産婦人科で知り合った二人の母。年齢が同じ、お互い初産で、予定日も近い。
気があった二人は、マタニティー教室などにも一緒に通っていたから、二人はお腹の中にいた時からその存在を知っていた。
生まれた日も一緒。あたしは星が降る様な真夜中、彼は朝日が昇る頃に生まれた。
新生児室で隣同士に並んだ写真が、あたしたちの初めての写真。
それからずっと一緒だった。
幼稚園に入るまでは互いの家を毎日のように行き来していた。やがて彼はあたしの家の道場に通うようになり、幼いあたしたちは共に稽古に励んだ。
幼稚園は一緒、小学校も一緒。中学校では違う学校になったけれど、彼は毎日のように道場に顔をだしていたから、会わない日の方が少なかった。
あたしに一番近い人が彼で、彼に一番近い人があたしだった。
彼があたしを一番理解していて、あたしが彼を一番理解していた。
それが当たり前で、変わる事なんて想像もしていなかった。
だけど――。
あたしの頭を何のためらいもなく優しく撫でる手が、いつの間にか大きく男らしくなったその手が、一人の女の子に触れようとして、でも躊躇いがちにひっこめたのを見て、気付いてしまった。
その横顔に浮かぶ、秘められた情熱を知ってしまった。
彼が他の子に恋をしていると悟った時、あたしは初めて自分の気持ちを理解した。
兄妹だと思っていた。親友だと思っていた。
でも、それは違うと今ならわかる。
――あたしは、彼に恋をしていた。